秘書検定試験は、問題の配点や採点結果が公表されていませんよね。
私もなんとか知りたくて、2・3級について、合格者の方の体験談や過去問分析から読み解き、主催者視点を絡めて検証してみました。
自己採点の際に、ご参考になさっていただけたら、とてもうれしいです。第134回(2024/11/17)分推定値は下の [ 関連記事 ] リンクからどうぞ。
なお、Twitter(現X) の引用箇所が、元投稿削除等により表示されない場合があります。どうぞご了承くださいますようお願いいたします。
結論:秘書検定は選択問題だけでは合格できない!
推定配点をご覧いただく前に、点数配分の前提となる条件について軽く触れます。(これがないと、基準が定められませんので。)
[点数配分の前提条件]
・点数総合計は100点。*1
・選択問題と記述問題では配点が異なる。*2
・記述問題では部分的正解でも加点がある。*3
以上を頭に入れてから、お読みください。
*1「点数総合計100点」とした理由は こちら
*2「配点が異なる」とした理由は こちら
秘書検定、配点の基本パターン
それでは、分析結果をご紹介していきます。
- 配点合計: 100点
- 選択問題:1問 2点
- 記述問題:4問で38点(問題内容により、各設問に振分け。)
基本、各問8点、難易度の高低や小設問数により増減配分。
これをベースに、小設問の数などに応じて調整。
検討の結果、記述問題は設問4つというより、小設問(13~)14問というとらえ方が、より実態に即していると思われる。よって、簡易的には実技正答数/(18+14)*が60%以上でも、合格判定の目安にはなりそう。
*(18+14)→ 18=実技分野の選択問題数。14=記述問題の小設問数と、(図を見て問題を指摘するような文章作成問題等の)加点要素数の合計。(まれに、14でなく13の場合も。)
あくまでも推測値ではありますが、過去問(約2年分)分析において、矛盾のない適用結果が得られています。
※2022/11/21追記:第128回配点推定記事で触れたのですが、小設問14問という大枠は崩してきているのかも知れません。実問題に即して判定する必要がありそうです。
※2023/02/11追記:第129回の配点を推定してみて、前回に引き続き小設問数のしばりは外されているように思えます。そして選択問題の難易度が高まっているのではとの情報が…..。
※2023/06/21追記:第130回の配点も、かなり柔軟な配点が設定されているような気がします。ただ、落とすための問題・配点設定ではないと言って差し支えない、「優しさ」を感じますね。
秘書検定、この配点は深い意味がある
ここで、配点の内容を、もうちょっと詳しく見てみましょう。
理論 (選択問題13問×2点=26点) 8問正解で60%
実技 (選択問題18問×2点=36点)+記述問題4問計38点=74点 45点で60%
※38点 → 試験回により、設問ごとの配点は異なる。
(加点判定要素、1単位につき1~4点4点程度の配点。)(2022/02/10修正。)
ご覧のとおり、選択問題だけ全部正解できても、合格できない配点になっています。
最低でも、記述問題2問分以上正解する必要があります。(なぜ「2問以上」でなく「2問分以上」なのかは、読み進めていただければ、わかると思います。(2020/03/12追記:要は、記述問題の配点が小設問単位ってことなので、部分的にしか解けなくてもいいから、書けるとこは書いときましょうねと。2022/02/10追記:部分的正解でもチリツモで、合格判定に持っていける場合がありますから。)
秘書検定はなぜ、選択問題だけで合格出来ない仕組みなのか
「理論」は8問=16点以上、「実技」は選択問題全問+記述問題2問~選択問題4問+記述問題4問の範囲で45点以上取れば、合格できることになります。
これは逆を言えば、理論分野が満点で,総点数61点以上取っても、実技分野が45点未満なら、不合格ということです。
とても実技分野に重きを置いた配点ですが、秘書業務の特性からすれば、これは充分妥当性のあるものです。(つまり、現場対応の知識がない人材では役に立たないので、実技分野の知識が少ない人材を、うまく排除できるよう設計されたシステム。)
この配点方法のメリット
- 「選択全正解・記述全滅」では合格できないので、マグレ合格を排除可。
- 合格者が一定水準の、「実技」分野知識を有することを担保できる、
(つまり、秘書検定制度の質や水準、権威性などの維持に有効。) - 問題のうち、多数を選択問題が占めることで、採点の大部分は機械化が可能であり、効率化が図れる。また、難易度の微調整もしやすい。
(メリットといっても、主催者側のメリットです。ごめんなさい。)
以上のような結果で、細やかな合否判定と採点効率化の両立が図れるこの配点法は、思ったよりもよく練りあげられたシステムである、というのが解析してみての感想です。
秘書検定、配点はこうして検証した
秘書検定過去問からの分析
過去問集や実際に受験したときの問題など、計8回分の問題を調べました。
過去問分析から判明したこと
1. 問題数などの大枠はずっと変更なし
◆総問題数………35問
[選択式問題]……31問 [記述式問題]…… 4問
◆分野別問題数詳細
●理論………合計13問
[選択式問題]……13問 [記述式問題]…… 0問
必要資質……… 5問
職務知識……… 5問
一般知識……… 3問
●実技……………22問
2. 選択問題と記述問題では配点が違う
理由:
- 同一配点とすると、例えば35問×3点=105点満点となり、不都合を生じる。
※不都合を生じる理由は こちら。
(秘書検定の満点が100点である理由) - 選択問題と記述問題で配点を変えることで、マグレ合格を排除できる仕組みになっているから。
この点については、上の方の文章でもちょっと触れていますが、くわしくは後ほどご紹介します。※いま詳しく読むなら こちら
(記述問題の配点を高くする真の理由)
3. 基本的な配点構成も変わっていない
理由:
(問題数などの、)大枠が変更されていないので、変更する理由がない。また、変更には採点システムの変更を伴うので、こちらだけを変更することは、コスト増のデメリットのみになり、意味がない。
(お断り:この部分に関しては個人的推測です。)
自己採点不合格での合格例から検証
「自己採点では不合格なのに、実際には合格」という事例が複数あったので、その理由を探り、配点構成を推測する根拠を見つけました。
不思議な合格事例から判明したこと。
1. やはり違う、選択問題と記述問題での配点
事例1*1
実技分野の問題で、自己採点では22問中約13問正解(記述問題の一部で部分的に正解)。13/22≒0.59で60%未満となり不合格のはずが、実際には合格。これは記述問題に対する配点が、選択問題より多くない限り、あり得ないことです。
2. 記述問題では部分的正解でも加点される
事例2*2
準1級受験者「部分的にしか解答できなかった記述問題を、0点カウントで自己採点したら不合格。でも実際には合格。」これは部分的解答でも、加点されたからこそでしょう。
*2 事例2は こちら
(秘書検定の記述問題では部分的正解でも加点がある)
検定制度自体の分析から配点方法を探る
システムとしての秘書検定に課せられる、様々な制約などから、問題配点に関する主催者の方針を分析しました。
文科省後援であることの制約
後援と言う「お墨付き」を得ることは、資格制度としての権威性を高めますが、同時にいくつかの制約を受けることでもあります。
考えられるものとしては、
・公平性・公正性の堅持
・合格者水準の担保と維持
・他の後援資格との整合性など。
(※他の人的資質や経済的資質など、重要ながら本題と関連性の低い事柄は、ここでは省略します。)
社会的資格制度としての意味
秘書検定制度は、特にビジネスシーンにおいて、一つの人的評価基準を提供するものです。したがって、ここでも公平性や合格水準の維持が要求されます。
しかし、自動車免許のような、規制的意味合いを持つものではないため、その採点姿勢は減点式よりは加点式に近いと推測されます。
上の2項から導き出されること
・秘書検定は受験者に優しい加点式採点
資格試験の主催者は、経営的視点から利用者(合格者)増を目指すのが常です。しかし、秘書検定の場合、文科省後援の大看板があるため、ハデな動きはできにくい立場です。
であれば、できるだけ合格に結びつく加点式採点法を選ぶのは、自然の成り行きですね。記述式問題が一部正解でも、ちゃんと点がもらえるのはそのためでしょう。
・秘書検定の配点合計は100点
国内実施の資格試験は、満点100点のものが多いようです。TOEICやMOS等国外由来のものでこそ、990点や1000点などですが、やはり多くの主催者が、文科省の定めた大枠(100点)に準じて実施しているためでしょう。
他の文科省後援資格と同様に、秘書検定が100点配点制を採用するのも、これまた当然ではないでしょうか。
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秘書検定は選択問題と記述問題では配点が違う
すでに何度か本文中で触れていることですが、ここで改めて、くわしくご説明します。
自己採点不合格でも合格だったワケその1
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以下にご紹介するのは、ある秘書検2級合格者の方が、正解に基づき自己採点した結果です。
理論 10/13
実技(選択) 9/18
実技(記述)
問32. 2/3正解
問33. 3/3正解
問34. 3/3正解
問34. 多分1/3正解(Yahoo! Japan 知恵袋より)
これ、選択・記述とも1問あたり同一配点とすると、(仮に記述問題を全部正解とみなしても、)正答(9+4)/実技問題総数(18+4)、つまり13問 / 22問≒59.1%で不合格となってしまうはずですね。
でも、実際には合格なさってるんですね。
ということは、選択問題と記述問題で、1問あたりの配点が異なるとしか解釈できません。
理論:10問/13問≒77% 合格
実技:(9問×2点)+ 38点×(3/4)≒ 18+28 = 46点 > 45点 合格
※選択問題=1問2点。記述問題=4問合計38点。実技問題合格最低ライン45点。
(この方の記述問題解答が、3問分正解として計算。)
なお、この方法だと、記述問題1問につき9.5点配点する格好で、厳密には誤差がでます。(問題や正答が不明の場合に有効な、暫定的方法です。)
追加情報を探していて、別の方の事例を発見しました。
理論 10/13
実技 11/18(マーク) 7/13(記述)秘書検定2級(受かったよ!!)
ブログ「深夜惨事。」より引用
※著作権法の範囲内での引用であるため、URLは掲載していません。(他の事例も含め、)直接ご連絡いただければ、詳細をお答えします。事例はすべて、第3者の実例です。
この事例だと、記述の正答数は、小設問単位での集計のようです。1問あたりの配点が同じと仮定すると、(11+7)/(18+13)=18/31で、58.06%。つまり60%未満。なのに合格ということは、やはり、選択問題と記述問題で、1問あたりの配点が異なるということで、ほぼ間違いないかと思います。
参考記事
記述問題の方が難易度は高め
自分で実際に受験した時にも感じたんですが、記述問題の方が難易度は高いと思われます。選択問題が5肢1択で、マグレもありそうなのに対して、記述問題では自分の知識から答えを生み出す必要があります。
これで配点が同じでは、むしろ不公平だと言い切れるぐらいの差なので、記述問題に高配点を設定するのは当然の流れでしょう。
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記述問題の配点を高くする真の理由
前の方で軽く触れていますが、ここで詳しく言及したいと思います。
マグレ合格防止システムのキモだから
この配点差が、実技知識が足りない人のマグレ合格を防ぐ仕組みの、重要ポイントになっています。
例えば超運が良くて、選択問題満点という人でも、必ず記述問題2問分以上正解しなければ、合格できないような、配点設定の工夫が、この配点差なんです。
①(運的要素が絡みやすい)選択問題のウェイトを小さくして、2度目の絞り込み
②記述問題を(部分的にせよ)解答必須にして、3度目の絞り込み
この2段階フィルターが、一定水準の受験者を抽出してくれるというワケですね。で、この仕組みの前には、(次の項目で解説の、)「選択問題で時間制限の壁」も設けてあるので、いやぁホント良くできてます。(※2022/02/09追記 [1度目の絞り込み] は [時間制限] ということです。言葉足らずですみません。)
試験全体の難易度調整の重要パーツだから
ここで質問です。
選択問題の問題数って何問あると思いますか?
31問に決まってるって?
いいえ、実は155問なんです。
だって、実際には設問1個につき、選択肢5個に対して何らかの判定を下すワケですから、31設問×5選択肢=155で、
実質155問解いているのといっしょなんですよね。
これだけ問題数が多いと、それは当然、時間的難易度を高める要素となります。(実際の話、受験してて、結構時間かかりました。)
少数の記述問題で知識的難易度を高め、多数の選択問題で時間的難易度を高める。そのためには、記述問題の配点を高めることが必須ということなんです。(もし配点を同じにすると、このバランスは保てません。)
採点効率を高めるキモでもあるから
前項で書いた「少数の記述問題」と「多数の選択問題」の組合せは、もっと別の意味もあるんです。
秘書検定って、試験後2週間ぐらいで、合格速報が出てるってご存じでした?
Web上での掲示にはなるんですが、2・3級だけでも3万人前後の答案を採点してるワケで、結構すごい処理速度だと思います。
試験会場からの答案用紙搬送に2日、仕事休みや、採点結果の入力などもあるので、機械処理しなければ、到底間に合わないはずです。
ここで、選択多め・記述少々のメリットが大きく生きてきます。(採点作業の大部分は機械処理に委ねて、大事な部分だけを目視採点すればよいのですね。)
ということで、記述問題の配点が選択問題より高いのは、確実と言ってよいのでは?
以上、記述問題の配点を高くする真の理由3つでした。
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秘書検定の記述問題では部分的正解でも加点がある
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自己採点不合格でも合格だったワケその2
「完璧解答できなかった記述問題を0点として、自己採点したら不合格判定なのに、実際には合格していた。」
これは、やはり採点方針として、出来るだけ合格に結び付く、加点法を採用していることの現れでしょう。
受験者に優しいこの採点方針は、主催者にとっても利用者拡大につながるメリットをもたらすものです。なので、「一部でも正解には点を与える」加点法での採点が実施されていることは、疑う余地がないと言っても過言ではないと考えます。
採点法と点数配分、実は結び付いていた
なお、前項で書きませんでしたが、実は、加点法式採点を実施するためにも、記述問題に対する配点を選択問題より高くすることが必須になっています。(というか、加点方式を採用するために配点を変えてあるというべきでしょうか。)
記述問題には、一つの設問で子問題(小設問)が、3つとか4つ設定されているものがあります。
<日にち> ツイタチ
<地名> シジョウナワテ
<アーティスト> キャリー〇ミュパ〇ュ
<ビットコイン> ナカモトサトシ
※実際に出題された問題形式を、項目のみ変更しています。
加点方式という立場に立てば、この問題には[最低配分点数×4]が設定されるはず。そして、最低配分点数はおそらく(整数の)1点。
でないと採点が煩雑になり、短期間での採点処理に間に合わない恐れが出てきます。
この場合、全問同一配点とすると、(最低配分点数は1点であるから)35問×4(=1点×4子問題)点=140点になってしまう。
これだと、下手をすれば、年によって総合計点が違ってしまい、試験回単位での比較などが難しくなる。そして最悪、採点システムの手直しが必要になる可能性も出てしまいます。
以上の問題を防止するには、記述問題に対する配点を、選択問題と別にすることが必要となるワケです。
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秘書検定の満点が100点であるべき理由
ここでは、前述してきたことをまとめ、補足した内容となります。
文科省後援だから
- 他の資格試験と大枠で共通性を保つ必要があります。文科省の後援を受ける以上、他の試験と共通の枠組みを持たなければならない可能性が高い。
同様に後援を受ける他の試験と、何らかの比較をする場合など、大枠を一致させておかないといけない。(大まかな試験ごとの難易度判定など。) - 一つの試験としての一体性を保つ必要があります。秘書検定にあっては、その対象業務の性格上、実技上の知識に重きを置かないといけないという制約があるので、合格ラインの設定の特殊性が発生。
つまり、合格ライン 理論60%以上正解&実技60%以上正解と、2つのふるいにかける必要が出てくる。
しかし、あくまでも一つの資格試験として認定を受けている以上、2つの試験が合体している体裁では好ましくない。
採点がしやすいから
解答の採点や集計が、100点までの整数値に限定されれば、機械処理・人的処理を問わず、作業効率が向上します。
既存のシステムを流用する際も、大枠に汎用性があれば、導入が比較的簡単になります。
難易度の比較判定がしやすいから
平均点の数値が即%数値なので、過去回との比較や難易度の調整用のデータとして、とても扱いやすいメリットがあります。
配点合計が100点じゃないと、上記3項目のメリットがなくなるという不都合が生じてしまうワケですね。
以上、受験者にはあまり意味のない、無駄なまとめでした。
田中です
配点設定という制度側のデータを読み解く内容であったため、非常に試験主催者絡みの部分が多い記事となりました。
ほとんどの方が読み飛ばしてくださることを、心より希望します。
で、ご紹介した配点設定で、自己採点をお試しいただけたら、その結果を合否と合わせて、フィードバックいただけると、とてもうれしいです。
大切な時間を割いてお読みいただき、ありがとうございました。
あなたのお役に立ちますように。